本製品は、血液中の細胞を蛍光顕微鏡下で識別・観察するための、Ready-to-use型研究用イメージングキットです。細胞表面および内部のマーカーを蛍光標識抗体で染色することで、得られた画像から発現様式や局在、細胞形態、さらにはクラスター形成といった高次情報を抽出できます。これにより、EMT（上皮間葉転換）、治療応答、CTC（循環腫瘍細胞）の異型性など、腫瘍細胞が示す多様な状態を包括的に評価することが可能となります。

Basic Panel IM は、核染色（DAPI）、白血球マーカー（CD45）、および上皮マーカー（EpCAM／CK）を同時に検出でき、血中に混在する多様な細胞の分類・解析を効率的に行うことができます。CD45はすべての造血系細胞に発現し、腫瘍細胞と免疫細胞の識別に有用です。EpCAM（CD326）は上皮系腫瘍細胞の膜に存在する接着分子で、がんの進展や転移に関与します。CK（サイトケラチン）は上皮細胞に特異的な中間径フィラメントで、腫瘍細胞の同定において高い特異性を示します。

一般に、CTCを含む腫瘍関連細胞は CD45陰性かつCKまたはEpCAM陽性 であることされており、Basic Panel IM はこの特徴を反映した設計となっています。その構成はFDAによるCTC定義（DAPI陽性、CK／EpCAM陽性、CD45陰性）を参考にしており、国際的な基準に基づいた信頼性の高い解析を実現します。本製品は、がん患者のモニタリング、予後予測、治療効果の評価、新規バイオマーカー探索など、多様な研究に幅広く活用することができます。

本製品は、細胞を固定、溶血、透過処理を行う前処理試薬、細胞核を検出するDAPI、および蛍光標識モノクローナル抗体で構成されています。染色後の細胞は蛍光顕微鏡で観察され、各マーカーの発現と局在を可視化できます。具体的には、FITC標識抗CD45抗体（Ex: 498 nm, Em: 522 nm）が白血球に発現するCD45を、PE標識抗CK抗体および抗EpCAM抗体（Ex: 488 nm, Ex: 532 nm）が上皮細胞由来のマーカーを検出します。DAPIは二本鎖DNAに結合する青色蛍光核酸染色色素であり、核を明瞭に染色します（Ex: 368 nm, Em: 461 nm）。これらの染色により、血中に混在する免疫細胞と腫瘍関連細胞を識別し、その形態や特徴を解析できます。

ヒト非小細胞肺がん細胞 (H1299) 添加血液染色例

H1299細胞に発現しているCKが、PE標識抗CK抗体によって赤色蛍光として検出されました。CKは中間径フィラメントに存在するため、細胞全体が強く染色されます。

また画像からは、非小細胞肺がん由来のH1299細胞が、周囲の白血球に比べて明らかに大きいことが視覚的に確認されます。

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ヒト乳腺がん細胞 (MCF-7) 添加血液染色例

細胞核 (DAPI: 青) 、EpCAM (PE: 赤)、白血球マーカーCD45 (FITC: 緑)が、それぞれの蛍光標識抗体によって染色され、各マーカーの分布が鮮やかに可視化されました。

MCF-7が発現したEpCAMのシグナルは赤色蛍光として鮮明に捉えられ、マージ画像では白血球(CD45陽性細胞)群とは明らかに異なる特徴を示していました。細胞膜に沿って発現するEpCAMの特徴が、画像から確認できます。

画像2

• Millner LM, Linder MW, Valdes R Jr. Circulating tumor cells: a review of present methods and the need to identify heterogeneous phenotypes. Ann Clin Lab Sci. 2013 Summer;43(3):295-304.

• Ju S, Chen C, Zhang J, Xu L, Zhang X, Li Z, Chen Y, Zhou J, Ji F, Wang L. Detection of circulating tumor cells: opportunities and challenges. Biomark Res. 2022 Aug 13;10(1):58. doi: 10.1186/s40364-022-00403-2.

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